Rhizopus株によるアフラトキシン(AF)産生抑制を液体培地(ショ糖と酵母エキスのみからなる)で調べるため、液体培地のpHと栄養素量について検討した。液体培地をpH6(初期条件)とpH8(Rhizopus株前培養後のpHに相当)に調整してAspergillus flavus株を接種したところ、9602株とPー1株ではAF産生量に差はなかったが、ATCC15517株では後者の産生量が少なかった。液体培地のショ糖濃度をSomogyiーNelson法で測定したが、Rhizopus株前培養後の濃度は妨害物質のため測定できなかった。そこで、前培養後初期量の栄養素を追加することとし、2倍濃度の対照群を調べたところ、pH6では通常のものと産生量は変わらなかったが、pH8では産生量が少なくなった。 Rhizopus株を前培養後濾過により菌体を除去してpH6に調整しA.flavus株を接種したところ、いずれの菌株についてもAFが産生されなかった。前培養後に菌体を除去して高圧滅菌し、pH調整の後A.flavus株を接種しても同様であった。pH調整前に栄養素を追加した群でも、わずかしか産生しなかった。前培養後に菌体を含んだまま高圧滅菌し、その後菌体を除去してpH調整し、A.flavus株を接種すると、産生量は通常の22ー45%に抑制された。この際、pH調整前に栄養素を追加しても抑制の程度は変わらなかったことから、高圧滅菌操作によりRhizopus菌体成分が栄養分となるものと考えられた。これらの成績から、Rhizopus株によりAFの産生量が減少するのは、pHや栄養素の枯渇によるものではなく、培養液中に抑制物質があるものと判断される。Rhizopus株前培養液を酢酸エチルで抽出したところ、油溶性画分、水溶性画分ともにAF産生抑制効果が認められた。現在、分画法について検討を重ねているところである。
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