YES培地(酵母エキス2%、シヨ糖20%、pH6.0)にAspergillus flavus株を培養後一旦高圧減菌し、その後Rhizopus株を接種して7日間培養し、前後のAF量を測定したところ、37〜57%のアフラトキシン(AF)が分解されることが判明した。他方、Rhizpopus株を7日間前培養したYES培地を高圧滅菌した上で、A.flavus株を接種・培養した場合にも、AF産生量は著しく少なかった。これには前培養による栄養素の枯渇も考えられることから、Rhizopus前培養液に酵母エキスとショ糖を追加してA.flavus株を接種した。この場合にも、Rhizopus株を前培養した例ではA.flavus株により程度の違いはあるもののAF産生量は少なく、0〜61%に抑制されていた。このことにより、Rhizopus sp.株がAFの分解のみならず、産生も抑えていることが確認された。 AF産生抑制物質がRhizopus株の前培養液中に存在すると考えられるので、種々の溶楳による抑制物質の抽出を試みた。ベンゼン、クロロホルム、アセトニトリル・クロロホルムなどの溶楳では水層に残る量が多かった。培養濾液を塩酸酸性下(pH2.0)でエーテル抽出すると水層にはほとんど活性が残らず、エーテル層に大半の活性が認められた。エーテル抽出物は、黒褐色を呈しており、YES培地に溶かすと酸性(pH3〜4)であった。高圧滅菌すると褐色の沈殿物が生じたが、NaOHで中和すると再び溶解した。pH無修正のまま沈殿を除去すると培養液の活性がなくなり、この沈殿物中に活性が認められた。また、エーテル抽出物を溶解して室温あるいは低温で放置すると失活することから、グルコン酸や蓚酸等の低分子のものではないものと推定された。クロマトグラフィーによる精製を試みているが、assayに時間がかかるため、現在のところ、十分なデータは得られていない。
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