研究概要 |
前年度に得た末梢血液単球の計量的成績を基に,胎生期のマクロファ-ジ常在性造血リンパ組織の中で,胸腺と肝臓に注目して単球との関連を観察した. 1.胸腺の発達と単球ならびにマクロファ-ジの出現〈光顕・電顕観察〉 胎生12ー13日では上皮性細胞に混じって,周囲の関葉組織から胸腺原基に直接遊走するリンパ系の自由単核細胞が少数散在するがマクロファ-ジは胸腺内には見られない.また胸腺内には血管も存在しない.胎生14日に胸腺の中にはじめて血管が進入する.胎生15ー16日で他家食胞を持ったマクロファ-ジが胸腺内に出現する.マクロファ-ジは胸腺中央部に多く,特に皮髄境界領域の血管周囲腔や血管に接し認められる.血管周囲腔には電顕レベルで単球と同定される単核細胞も少数存在する.単球は核は切片上で分葉状の断面を呈する事が多く,胞体に顆粒,細胞膜下液胞,細胞膜の突起に加え細胞計量的にも成熟動物末梢血液単球の特徴を有する.胸腺マクロファ-ジは単球を前駆細胞とみなす事ができる. 2.胎児肝臓の発達と単球の形成〈電顕観察〉 胎生11ー12日では類洞には原始赤芽球を貪食するスカベンジャ-マクロファ-ジが多数存在するが,形態学的に単球と認識される細胞は認められない.胎生13日で肝細胞索内に赤血球系造血細胞と混じって,その数はきわめて少ないが単球が出現する.従って胎生13日以後の胎児におけるマクロファ-ジ単核食細胞系の発生の関連しては,胸腺マクロファ-ジ以外にも単球の関与を考慮に入れる必要がある.
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