研究概要 |
下垂体前葉のACTH細胞で生成されるペプチドは,中間部のMSH細胞と同様に,プロオピオメラノコルチン(POMC)と呼ばれる共通な前駆体ホルモンの細胞内プロセッシングにより形成される。しかし,この前駆体POMCが細胞内のどの部位でプロセッシングを受け,いかなる機構で輸送されて行くのかについては充分研究がなされていなかった。ラット前駆体POMCに対する特異抗体(STー1)と各種POMCフラグメントに対する抗体を用いて,凍結超薄切片上で免疫染色を行い,その染色性の差異からPOMCの細胞内プロセッシングの起こる部位を特定した。ACTH細胞とMSH細胞ではPOMCのプロセッシングの起こる部位が異なることが明らかされた。さらに,視床下部弓状核のPOMC細胞では,STー1抗体は細胞体を強染するが,線維はほとんど染色しない。一方,プロセスされたPOMCのフラグメントに対する抗体では,線維は強染されるが,細胞体の染色は弱いことが示された。この結果は弓状核のPOMC細胞では細胞体でPOMCがプロセスされ,プロセスされたペプチドが線維に輸送されると考えられた。プロセスされたペプチドに対する抗体は前駆体も認識するので,プロセスされたペプチドに特異的な抗体を用いることにより,プロセッシングが最初におこる部位を明らかにする目的で,ラットACTH(25ー39)とラットアミド化JP((C)PEPSPREーNH_2)をそれぞれ固相法によりペプチド合成を行ない、これらを免疫原として抗血清を得た。AtTー20細胞を用いた免疫沈降法により,これらの抗体の特異性を検討した結果,ACTH(25ー39)は前駆体POMCとACTH(1ー39)の両者を認識し,アミド化JPはそれ自身のみを特異的に認識することが明らかにされた。今後,STー1抗体とアミド化JP抗体を用い最初にプロセッシングがおこる部位とそれがどの部位まで継続するのかを免疫細胞化学的に明らかに出来る可能性が生まれた。
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