1.マウス胎児口蓋原基における上皮成長因子受容体(EGFーR)の発現と局在 胎齢12、13、14日のマウス胎児より口蓋原基を摘出し、固定後、連続切片を作製して、抗ウサギEGFーR抗体を用いて免疫組織化学的染色を施した。その結果、二次口蓋突起の上皮細胞におけるEGFーRの免疫染色反応は、胎齢とともに増強することが認められた。口蓋突起中部の上皮では、後部口蓋よりも強い陽性反応が見られた。左右の口蓋突起が癒合する直前には、口蓋突起先端部の上皮でEGFーR染色反応が局所的に消失していた。なお、胎齢14日胎児の癒合中の口蓋では、癒合部に残存した上皮細胞もEGFーR陽性であった。 また、口蓋突起の間葉細胞にもEGFーR陽性反応が認められ、部位特異的な局在パタ-ンと経時的変化を示した。 次に、胎齢12日のマウス胎児から口蓋原基を切り出し、無血清の完全合成培地で48〜72時間培養した後、上と同様の免疫組織化学的検索を行った。その結果、培養胎児口蓋におけるEGFーRの局在と経時的変化は、in vivoのそれらとほぼ同様の結果を示し、本器官培養系が、in vitroで口蓋形成機序を研究する上で有用であることが示唆された。 2.ヒト胚子組織におけるEGFーRの局在 社会経済的適応にもとづく人工流産によって得られたカ-ネギ-発生段階15〜23(胎齢33〜56日)のヒト胚子を用い、連続切片作製後、EGFーRの局在を抗ヒトEGFーR抗体を用いた免疫組織化学により観察した。その結果、胚子の表皮、消化管上皮、気道上皮、排泄腔上皮、心筋、脊索、軟骨原基等にEGFーR陽性反応が認められた。
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