(1) ヒト好中球を走化性ペプチドで刺激し、アクチン、スペクトリン、バンド4.1の局在を経時的に観察した。非刺激状態の好中球では、アクチン、スペクトリン、バンド4.1は細胞全体にほぼ均一に分布するのに対し、走化性ペプチドで刺激され、形態的に分極化した好中球では、アクチンは頭部に、スペクトリンは尾部に各々集中し、一方、バンド4.1は細胞接着面の細胞前端付近と尾部細胞質に顆粒状に認められた。 (2) スペクトリンの尾部への局在化は、走化性ペプチドで刺激した後、25℃、2〜3分で約60%、5分で約70%の細胞に認められるきわめて早い現象であったが、その割合は10分後から減少し始め、60分後には約20%の細胞に見られるに過ぎなかった。underーagarose法を用いて、走化性ペプチドの濃度勾配を形成させると、これに沿って遊走する細胞では、2時間後にもスペクトリンの尾部への集中が認められた。 (3) 免疫電顕法により、スペクトリンは好中球の細胞膜ではなく、細胞質表層の細胞骨格に存在することが明らかになった。この分布は赤血球やリンパ球の場合と明らかに異なっていた。一方、バンド4.1は細胞質に見られる顆粒の周囲に局在していた。 (4) 以上の結果は、スペクトリン、バンド4.1などの膜タンパク質が、走化性ペプチドによって好中球に惹起される遊走、貧食、あるいは脱顆粒などの過程で重要な役割を演ずることを示すものである。
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