1.免疫電子顕微鏡法による半定量的解析により、フォドリンは細胞膜直下には全体の約23%しかなく、大半が細胞骨格に結合して存在することを見いだした。これは、赤血球スペクトリンの99%以上、リンパ球のフォドリンの約87%が細胞膜直下に存在するのと対照的な結果であった。好中球のフォドリンが細胞膜タンパク質としてよりも細胞骨格タンパク質として存在することが明らかになった。 2.基質に接着した状態の好中球についてみると、無刺激の状態では細胞は円形を呈し、フォドリンは細胞全周にほぼ一様に分布した。走化性因子であるfーMetーLeuーPheをあたえると細胞は形態変化をおこし、フォドリンは細胞の後半部に集中した。一方、アクチン繊維は細胞の前半部に密に分布した。このフォドリンの局在変化は25℃で2分後には約70%、10分後には約80%の好中球にみられたが、その後漸減して60分後には20%程度の細胞にみられるのみであった。すなわち、フォドリンの分布がごく短時間の内に変化することが示された。 3.細胞膜直下に存在するフォドリンについてさらに詳細な解析を行う目的でUNROOFING法を開発し、免疫電顕的に観察した。その結果、非刺激下の細胞ではフォドリンは細胞膜に一様に存在し、一部は5nm径の繊維に結合しているのが観察された。fーMetーLeuーPheの刺激を受けた細胞では、フォドリンは細胞の後半部分に新たに出現した多数の10nm径の繊維束の間隙に密に分布していた。 4.フォドリンの分布変化については、他の細胞についても検索し、表皮角化細胞、角膜上皮細胞においても動的な変化を示すことを見いだした。またUNROOFING法を培養クロマフィン細胞に応用し、特徴的な局在を免疫電顕により観察した。
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