研究概要 |
生体材料Biomaterialsの生体組織に対する反応性Biocompatibility(生物適合性)について、培養系と動物実験によって光顕・電顕レベルで追及した。 1.培養(in vitro)実験-生体材料と生体細胞の親和性の検討 (1)マウス頭蓋冠由来骨芽細胞の継代培養:生後2〜3日のマウス(CD-1)30〜60匹の頭蓋冠から分離した骨芽細胞を10%ウシ胎児血清を加えたMEM培地で培養し、5日目〜60日目の材料のほか、長期継代培養の結果、株化した細胞を材料とした。 (2)基質との接着性の観察:培養骨芽細胞を、純チタン板(厚さ15μm)やプラスチック板基質と共に平板静置培養し、培養細胞と基質との反応性を、タイム・ラプス・ビデオレコーダーを用いて撮影し、観察した。初代培養から初期(5日目〜2週間目位)の骨芽細胞は、チタン板表面上でもプラスチック板と同様に強く接着し、正常に増殖した。薄く伸展した細胞はfilopodiaやlamellipodiaをもって基質と密に接着しおり(SEM)、podia内には多数の張原線維が見られた(TEM)。長期培養細胞は多層となり、細胞表面および細胞間には多くの膠原線維を分泌していた。膠原線維には基質小胞が付着しており、培養3ヶ月以後、von kossa法でカルシウムが検出されチタン板上での骨形成が示唆された。 2.動物実験(in vivo)-サル下顎骨PCI表面の骨芽細胞の観察 ニホンザルの小臼歯を抜歯後、チタン製多重毛管インプラント(Poly-capillary implant,PCI)を挿入し、3,6,12ヶ月後に取り出し固定後、PCI表面の骨形成部を電顕観察した。PCIの孔内の骨形成部の電顕観察(TEM,SEM)では膠原線維の間にアパタイト結晶がみられた。 以上の結果から、チタンの生体材料としての有用性が生物学的にも証明された。
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