精子発生における生殖細胞膜は、精子の各部で色々な特殊化が認められているが、造精細胞での細胞質橋については余り理解されていない。結論的に述べれば、細胞質橋の存在は同調した精子発生のために存在するのではなく、むしろ存在意義を他に求めるべきである。この結論の根拠である細胞質橋が特異的分化を果たした膜構成を持つことは既に報告した。 本年度は更に脂質構成要素をレクチンを用いて組織化学的に検索した。レクチンのWGA、UEAー1、PHAーE4は陰性、RCA120は疑陽性、LCA、PNA、ConAは陽性の結果を得た。細胞質橋は膜内タンパク質を殆ど欠如することからも、橋の細胞膜を構成する脂質には糖脂質が含まれることが判った。この結果については、岡崎生理学研究所での生殖生物学セミナ-で発表した。 細胞質橋の細胞膜と細胞骨格の関係を検索した免疫組織化学法ではいづれも陰性で、細胞質橋に付随する周期性のあるバンド構造が、まったく構成分子が異なるのか、用いた抗体の交差性によるものかを追求中である。 細胞質橋の細胞膜の単離を種々の界面活性剤を用いて試みた。非イオン性界面活性剤ノニデット、P40で分離できることを電顕的に観察した。付随するバンド構造も共に分離でき、それが形態学的に非常に横紋筋に近い構造を示すことが判り、シエナ(伊)における国際精子学シンポジウムで報告した。 上記の成績については、現在論文執筆中である。
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