研究概要 |
ラット視床下部の視索上核のバソプレシン産生ニュ-ロンに延髄のA1領域(ノルアドレナリン細胞分布領域)からの投射ニュ-ロンがシナプス入力していることを順行性軸索標識法とバソプレシン免疫染色法の組合せ法で観察証明した。バソプレシン産生細胞へのシナプス入力についてラット視床下部室傍核でdopamineーβーhydroxylase(DBH)免疫陽性終末がバソプレシン免疫陽性ニュ-ロンにシナプス入力しているのを観察し,バソプレシン産生ニュ-ロンのノルアドレナリン性神経支配の存在が示唆された。これらの観察結果に基づいて,ノルアドレナリンのバソプレシン生成分泌への影響を調べるために,延髄A1領域を電気的に破壊(一側性)したラットについて,視索上核と室傍核におけるtyrosine hydroxylase(TH),DBHおよびphenylethanolamineーNーmethyltransferase(PNMT)のカテコラミン合成酵素とバソプレシンの免疫染色性の変化について調べた。その結果,破壊後2,3週でTHとDBHに顕著な減少をみたが,PNMTには明らかな変化はみられなかった。一方,バソプレシンの免疫活性には顕著な変化はみられなかった。この方法による観察については,術後もっと長期間の実験動物について現在検索を進めている。この他に,バソプレシン(AVP)遺伝子の発現状態を指標としたin situ hybridization法による種々情報伝達物質の効果を検索するために,ラット・プレプローAVPmRNAのニュ-ロフィジンIIのCー末端部分の10アミノ酸残基部分とhybridizeする合成オリゴヌクレオチドにアルカリフォスファタ-ゼを標識したプロ-ブを用いて,ナフト-ルブル-発色によるAVP遺伝子の発現状況を観察し,特異性の高い良好な結果を得たので,現在,上記の電気的破壊ラットについて検索を進めている。さらに,ノルアドレナリンとそのレセプタ-のアゴニストとアンタゴニストの脳室内投与群についても上記in situ hybrridization法による検索を進めている。
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