研究課題/領域番号 |
02670021
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
山下 廣 東京慈恵会医科大学, 医学部医学科, 教授 (20056716)
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研究分担者 |
早川 敏之 東京慈恵会医科大学, 医学部医学科, 講師 (10057036)
加藤 征 東京慈恵会医科大学, 医学部医学科, 助教授 (60056851)
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キーワード | Spiral artery / Softex‐Angiography / 血管鋳型樹脂標本 / 腎錐体部・乳頭部 / 血管構築 / 血管の二重支配 |
研究概要 |
研究課題名は「腎錐体部の血管支配についての解剖学的研究-特にSpiral arteryについて」である。収集した人・腎155例を使用した。得られた知見として、 1.血管樹脂剤(Mercox)注入、SoftexによるAngiography像及び血管鋳型標本より:詳細に観察するとほぼ全例にSpiral arteryは存在し、片側腎で約3〜4本を数えることができる。2.殆どが葉間動脈より分枝し、腎孟壁に沿って長い走行距離をもって腎杯壁に分布し、網目状構造を形成しつつ、腎杯の栄養血管としての存在意義が考えられた。3.連続組織切片の光顕による血管再構築の所見から:腎杯壁を栄養するとともに、一部は分枝し腎柱より錐体部、とくに腎乳頭部へ走行分布し、これらの領域をも栄養している可能性が強く示唆された。Vasa rectaとの関わりについては、吻合することはなく、独立する血管系と考えている。 以上、Spiral arteryは腎孟及び腎杯壁にその栄養血管として広く分布している。この動脈は、葉間動脈又はその二次性分枝から派生して、互いに吻合して血管網を形成し、その一分枝が腎柱部を上行して腎錐体部に入り、独立して乳頭部に分布する。乳頭部での主たる支配動脈である直細動脈の種々の疾患時に予想される障害に際して、代償性血行路としての潜在能力を有する副血行路の役割を有する血管系の一つとして考えられる。即ち1959年Bakerの提唱した「錐体乳頭部の二重支配説」を形態的には支持賛成する所見を得たと考える。又Spiralの形態をとらざるを得ない理由として、一つは腎孟の形態と機能を考えた場合、生理的には腎孟の収縮運動による尿の駆出、種々の病態での腎実質の形状変化、とくに実質の萎縮を伴う場合の二次的な腎孟の拡張、乳頭部の循環障害や炎症の波及を考慮すれば、必然的にその領域に分布する血管系は伸縮性をもつ余りのある血管がより合目的であると考えられる。
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