研究概要 |
1.リンパ節発育のどの時期から外来性抗原に反応して濾胞形成を行うかについて前年度ではマウスを用いて検討したが、今年度はラットを用いて検討した。生後1日,1,2,3,4週に抗原を足底に投与し,所属リンパ節の濾胞数を無処理例と比較した。その結果、抗原反応性の濾胞形成能は、生後2週頃に発生することが示された。2.外来性抗原に対する反応性(濾胞形成能)の発生の時期を明確にするためには、抗原投与後の輸入リンパ流入を遮断する必要がある。予備実験として、成熟マウスにおいて抗原刺激を加えた後に輸入リンパ管切断を行い、濾胞形成が誘発されるか否かを検討した。抗原投与後1,3,24hにリンパ管切断を行ったところ、いずれの場合も濾胞数が増加し、濾胞形成が誘発された。ただし、この増加は、抗原単独投与の増加にはおよばなかった。マウスでは、輸入リンパ管切断により、リンパ節内のリンパ球循環が渋滞しリンパ球が滞留することから、これが濾胞形成にマイナスに作用したものと考えられた。3.リンパ濾胞の正常発生には何らかの内因性因子が関与している可能性がある。同系マウスから得た血清、赤血球、リンパ球、これらを熱変性させたもの等を投与し濾胞形成を誘発するか否かを観察したが、今までのところ陽性の結果は得られていない。4.ラット膝窩リンパ節は、輸入リンパ管を下腿部から受ける他に尾部からも受けることがある。これらのリンパ管で運びこまれるリンパがリンパ節にどのように分布するのかを蛍光ラテックス、蛍光蛋白を用いて検討した。その結果、それぞれの輸入リンパ管によって運びこまれるリンパは、リンパ節内の異なる領域に分布することが明らかとなった。足底または尾に抗原を投与したところ、抗原に対する反応野は抗原の分布領域と一致しており、リンパ節構造が輸入リンパの潅流領域に従って機能的に区画されていることが実証された。
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