研究課題/領域番号 |
02670023
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
神経解剖学
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
井上 芳郎 北海道大学, 医学部, 教授 (20051584)
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研究分担者 |
高山 千利 北海道大学, 医学部, 助手 (60197217)
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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キーワード | Wriggle mouse sagami / 遺伝性疾患モデル / Mutant / Dystonic mouse / 可塑性 / 小脳 / Biocytin / DiI |
研究概要 |
Wriggle Mouse Sagami(以後WMS)は1984年に分離された筋緊張の異常など激しい症状を持つ常染色体劣性遺伝型の新しい神経奇形マウスである。WMSの中枢神経系のニュ-ロンの位置、層構築、髄鞘構築は一見正常であり、伝導路は光学顕微鏡のレベルで正常に形成されている。このマウスについて伝導路標識法、IP_3受容体蛋白質・GAD・GABA・セロトニンの免疫組織化学及び電子顕微鏡による検索によって次の事を明らかにした。 1.大脳皮質の細胞構築に異常は認めなかったがneuropilにおけるシナプス構築に異常を認めた。即ち球形シナプス小胞を多量に含有する終末ボタンが多量に増加していた。 2.小脳皮質への投射ニュ-ロンすなわち網様体核群、オリ-ブ核、青斑核、縫線核、橋核は正常とその分布について著変を認めなかった。 3.セロトニン・ニュ-ロンを主体とする縫線核ではセロトニン含有ニュ-ロンの分布には差がみられなかった。また、小脳皮質ではセロトニン線維が観察される頻度がやゝ、高い程度で顕著な差は見られなかった。 4.小脳分子層ではプルキン工細胞と平行線維間のシナプス形成が低下していたが、一部GABA含有終末と考えられる終末ボタン構造が有意に増加していた。しかし、GABAニュ-ロンの籠細胞、星状細胞、ゴルジ細胞には量的にも分布の上でも著しい変化はなかった。 5.海馬分子層にシナプスの形態および有髄線維の走行に差が見られた。 以上からWMSはニュ-ロンの構築や伝導路は正常に保たれるが、脳全体にわたってシナプス形成の場に異常がある新しいタイプのmutationであると推定され、神経系の情報伝達系を解析する上で重要な武器となることが明らかになった。本研究では伝導路の新しい標識法としてDiIも使用したが、DiIは幼若な死後脳のニュ-ロン標識にも利用できることから今後その適応を明らかにしたい。
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