神経細胞は軸索と樹状突起という機能の異なる2種の突起を有す。突起では物質の合成は行われず、細胞体で合成された神経伝達物質や受容物質が軸索流や樹状突起流によってそれぞれの終末に送られる。微小管は軸索流の形成に重要な働きをなす。軸索及び樹状突起には微小管が豊富に含まれる。物質合成の場である細胞体において、これらからの微小管はどのような配置をとるか、また粗面小胞体やゴルジ装置との位置関係はどのようになっているのか。移送物質の仕分け機構を考えるために1個の神経細胞の細胞体全体を電顕超薄連続切片で追跡し、更にコンピュ-タによる三次元構築を試みて、下記の結果を得た。 1.典型的な双極神経細胞で、辺縁ニッスル野と中心ゴルジ野という特異な細胞質を有する金魚の小脳プルキン工細胞を材料とした。 2.樹状突起からの微小管は細胞体に入ると分散し中心ゴルジ野の中に消えるが、軸索初節内で側枝により連結され束ねられた微小管は束をつくったまゝ細胞体に入り中心ゴルジ野内に終る。 3.約400枚の軸索を横断する連続切片により、軸索小丘で数えた約400本の微小管は細胞体の中央部では130本ほどに、細胞体から20μmあまり離れた軸索初節の遠位部では50本に減少することが明らかになった。 4.10個の細胞について、細胞体に含まれるすべてのゴルジ装置をコンピュ-タに入力して再構築し、軸索微小管束との関係を検討した。結果、軸索微小管束と明らかに密接な位置関係を有するゴルジ装置は存在は10例中7例に見出されたが、残りの3例では全体が一つの大きなゴルジ網を形成し、軸索微小管束との特別な関係は見出せない。 5.以上の結果から、ゴルジ装置は一定の固定した形態を有するのでなく、一定の周期に従い離合集散をくり返すのではと推測した。
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