脊椎動物の神経細胞は、興奮を送り出す軸索と興奮を受ける樹状突起の二種の突起を有する。突起内にはリボゾームやゴルジ装置などのタンパク合成に関与する細胞小器官を持たない。従って、軸索終末にみられる神経伝達物資や、樹状突起棘などに含まれる受容物質は、細胞体で合成して仕分けし、必要とされる突起にそれぞれ送られる。物質の輸送にはマイクロチュブルスがガイドとして重要な働きをなす。 研究初年度は軸索および樹状突起の中を走るマイクロチュブルスは細胞体ではどうなっているか、特に軸索のマイクロチュブルスを細胞体辺縁に粗面小胞体、中央部分にゴルジ装置と細胞小器官に分布に極性分化のある金魚小脳プルキンエ細胞を使って行った。 二年度は、軸索から細胞質内に長く伸びる微小管束がゴルジ装置と立体的にどのような関係を有するかを長大な(〜700枚)超薄切片の連続で検べた。 三年度は、樹状突起内に時に多数みられる多層小胞体の立体的な配置と存在頻度をラットの週令を追って調べた。多層小胞体は滑面小胞体が扁平な層板をなし、それらが大きいものでは15層ほど重なり合って作る特異な構造である。従来は固定のアーティファクトと片づけられていたが、イノシトール3燐酸の局在が免疫組織学的に証明されて以来、脚光をあびるようになった。 結論として、神経細胞は細胞小器官の立体的な配置を詳細に分析すると、絶えずその立体構造は変化し、細胞の機能状態は細胞毎に異なり、時間と共に変化してゆくものと思われる。
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