研究概要 |
ゴルヂ染色標本を用いたX線顕微鏡による厚い試料(200μm)の觀察によって,ラツトの海馬および歯状回における繊細な星状グリア細胞突起の三次元的な構造を明かにすることができた。然しながらX線顕微鏡の解像力は現在の処ほぼ光学顕微鏡の解像力と同程度であるため,詳細な觀察のためには,X線顕微鏡本体および画像処理の面での改良が必要である。同じく,ゴルヂ染色標本の光学顕微鏡および超高圧電子顕微鏡による觀察によって,ラットの海馬および歯状回において極めて繊細な葉片状の細枝による網目をつくる小型の星状グリア細胞(細胞質性星状グリア細胞),直線的な突起と比較的粗な終末分枝をもつ大型の細胞(繊維性星状グリア細胞と思われる)血管壁に密着し,長い突起をもつグリア細胞(ミクログリアと思われる),有髄繊維束に密接して直線的で長い突起をもつグリア細胞(稀突起グリア細胞と思われる)などの終末分枝の三次元的な構造の詳細を明かにすることができた。特に稀突起グリア細胞については有髄繊維束に副つて走る粗大な突起と,繊維束内に分枝する細かな突起の三次元的な構成をはじめて明かにすることができた。脊髄灰白質および脳幹網様体部では神経細胞の表面を粗い網目で覆うグリア細胞が存在し,超高圧電子顕微鏡像では網目に一致して,グリア細胞の扁平な終末枝で囲まれたコンパ-トメントが密接して存在するのがみとめられた。プロテオグリカン免疫染色によって染め出された点状の神経終末の像と,グリア細胞による網目の像とはオフセットの関係にあることが分かった。なお厚い試料の光学顕微鏡觀察によって,神経細胞表面にみられた網目と,その母細胞とみられるグリア細胞との連絡が認められた。この種のグリア細胞のタイプを同定するために標識抗体を用いた觀察を計画している。
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