超高圧電子顕微鏡及びX線顕微鏡によるグリア細胞突起三次元構造解析

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02670031
• 研究機関: 早稲田大学
• 研究代表者: 濱 清 早稲田大学, 人間科学部, 教授 (90028267)
• キーワード: グリア細胞 / ゴルヂ染色 / 三次元観察 / X顕微鏡 / 超高圧顕微鏡

研究概要

グリア細胞膜に各種のイオンチャネル及び神経伝達物に対する受容体が存在することが報告され、その生理学的な特性が明らかにされて来たところから、グリア細胞が神経細胞の興奮伝達、情報処理、さらに記憶などに積極的に関与すると考えられるようになってきた。そこで本年度は中枢内部位によるアストログリア細胞の局所的な形態の多様性、特に神経細胞との接触関係について、ゴルヂ染色標本を用いて光学顕微鏡および空高圧電子顕微鏡観察を行った。ラットの海馬および歯状回についての観察では、細胞体周辺に多数の細突起を出し、ニュ-ロパイルの比較に狭いドメインで各シナプスのまわりを取り囲む細密な網状構造をつくる小型の典型的な細胞質性アストロサイトのほかに、樹枝状に分枝する長い突起をもつ大型のアストロサイトとがある。前者は細胞体、或いは大型の突起の表面からも直接に多数の細突起を出して瀰漫性の網目をつくる。毛細血管表面に達した細突起は偏平な木の葉状となって血管小足をつくるが、隣接した小足の扁平な部分は瘉合して連続性に毛細血管外周を蔽う薄板を形成しているように見える。大型のアストログリア細胞はやや大径の血管の近くに見られることが多く、血管に向かって大きな血管足を出す。このタイプの細胞は樹枝状に分枝する突起の形態によって、直線毛で胎ど分枝しない突起をもつ繊維性アストロサイトと区別することができる。上記のような形態学的な性質から小型の細胞質性アストロサイトは主としてシナプス伝達に関係おこる微小環境変化の処理に関与し、大型のアストロサイトはサイフォニングの機能を介して、比較的広いドメインでの神経活動による環境変化に対応しているのではないかと考えている。

研究成果

• [文献書誌] N.Katagiri,K.Hama et al.: "High voltage electron microscopic study on the axon of the dermal photoreceptor cell in the dorsal mantle of Onchidim verruculatum" J.Electron microscopy. 39. 363-371 (1990)
• [文献書誌] K.Hama: "Three dimensional morphology of the astrocytic processes covering the surface of the meuronal soma with many terminal boutons." J.Biomedical Research. 12.Supp.2. 159-160 (1991)
• [文献書誌] E.Ito,T.Takahashi,et al.: "An approach to imaing of living cell surface topgraphy by scanning tunneling microxcopy" Biochemical and Biphysical Research Communication. 177. 636-641 (1991)
• [文献書誌] S.Nakamura and K.Hama: "The transverse tubular system of the hypertrophic myocardium:morphology and morphometry in spontanions hypertensive rats(SHR)" Anatomy and Embryology. 184. 529-540 (1991)
• [文献書誌] K.Hama: "Threeーdimensional organization of neuronal and glial cell processes as revealed by HVEM stereoscopy" Electron Microscopy. 49. 144-145 (1991)
• [文献書誌] K.Hama: "Threeーdimensional morphometry of biological fine structure using HVEN stereo images" Electron Microscopy. 49. 432-433 (1991)