研究概要 |
脳のエネルギ-代謝を規定していると言われている毛細血管をIndia ink注入組織標本で画像解析装置により海馬領域についてその密度(%±SEM)を測定,次の結果を得た。分子ー網状層30.5±2.8、錐体細胞層(CA3a)27.0±3.9、歯状回分子層25.6±2.3、錐体細胞層(CA3)23.9±1.6、歯状門22.0±3.2、錐体細胞層(CA1)20.6±1.9、上昇層20.3±2.1、放射状層18.9±2.4、透明層15.9±2.0歯状回顆粒細胞層14.6±3.2。すなわち、分子ー網状層が有意に最も高くP<0.01)、次いでCA3a錐体細胞層、歯状回分子層が高く(P<0.01),逆に透明層、歯状回顆粒細胞層は有意と最も低かった(P<0.05)。この結果は、CA3錐体細胞層を除けば先に行なったAstrogliaの密度分布とほぼ同じ順位である。一方,脳は従来glucoseの取り込みに対し血中のinsulinに影響されないと言われて来たが近年脳にinsulinーreceptorの存在が確認され,脳へのinsulinの関与が注目され始めている。しかしながら,脳内のinsulinーreceptorの分布状態については研究者によってその結果が違っている。そこで本研究においては ^<125>Iーinsulinを用いてIμM cold insulin添加の場合と添加しない場合とをmicroautoradiographにより比較,その差を測定することにより海馬領域のinsulinーreceptorの密度分布(grains/mm^2±SD)を測定、次の結果を得た。歯状回顆粒細胞層95.0±25.7、CA3b錐体細胞層87.3±37.3、CA3c錐体細胞層74.2±37.4、CA1錐体細胞層60.2±32.2、分子ー網状層53.9±23.1、上昇層43.1±23.3、歯状門42.1±32.4、放射状層37.3±22.4、透明層34.3±34.9。すなわち、insulinーrecoptorの最も高い密度分布を示したのは歯状回顆粒細胞層、CA3b,C錐体細胞層であり(P<0.05)、逆に分子ー網状層は,これ等部位に比べ有意に低かった(P<0.01)。以上の結果はCA3錐体細胞層を除けば,先の毛細血管およびAstrogliaの密度分布と全く逆の結果である。このことは,脳ではinsulinは、glucoseの取り込みでなくそれ以外の作用に関与しているのではないかと推測される。
|