研究概要 |
脳の海馬領域のグルコ-ス取り込みを規定する諸因子として、インスリン、インスリンレセプタ-、グルコ-ストランスポ-タ-及びラミニンの密度分布をABC法による免疫組織化学的手法により検索、次の結果を得た。1)Antiーinsulin(Porcine,200倍希釈)を用いたインスリンの分布は、錐体細胞層、顆粒細胞>上昇層、分子層>放射状層>分子網状層、多形細胞層の順で高く、前年度において組織切片培養でオ-トラジオグラフィ-により検出されたインスリンレセプタ-の密度分布とよく一致していた。しかしながら、Insulin receptorの分布を免疫組織学的に検索するために行なった、灌流固定ラット脳を用いての二種類の一次抗体(antiーinsulin receptor,human20倍、human placenta45倍希釈)標本では免疫陽性反応は海馬領域において全く認められなかった。2)毛細血管の基底膜を構成しているlamininの分布は、antiーlaminin(EHS sarcoma,200倍希釈)を用いてのacidーalcohol固定標本では毛細血管壁が強く染まり、同時に、錐体細胞、次いで顆粒細胞が陽性を示した。しかしながら、パラホルムアルデヒド固定標本では、血管壁は陰性であった。3)脳内にグルコ-スを取り込む際に働くグルコ-ストランスポ-タ-の分布をantiーglucose transporter(rat brain,200倍希釈)で検索すると、毛細血管の壁が陽性であり、実質では、多形細胞層>分子層、上昇層>分子網状層>放射状層>錐体細胞、顆粒細胞層の順に高い陽性を示した。次に海馬領域の各層のシナップスの量を各例につき60枚の電子顕微鏡を測定した結果、錐体細胞と顆粒細胞層のみが他の層より低いことが明らかにされた。加齢モデルとして、2.5%亜硝酸ナトリウム(225mg/kg腹腔投与、30分負荷)によるanemic hypoxiaの実験でシナップス量の変化、及びGFAP法によるアストログリアの形態的変化を観察したがいずれも異常は認められなかった。
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