この研究の目的はコラゲネ-ス処理によってえた唾液腺の単離腺房細胞にパッチクランプ法を応用して分泌刺激時の微小膜容量の変化を解析し、蛋白分泌の制御機構を明らかにすることである。本年は主に膜モデルを用いて、購入したパッチクランプ増幅器(西独リスト社製、EPCー7型)および現有する位相検出器(NF社ロックイン増幅器、LIー754)、パ-ソナルコンピュ-タ-(NEC社、PC9801ーPA2型)を組み合わせて膜容量計測法の開発とその限界を求めた。 (1)入力容量の補償:パッチクランプ法を利用して膜容量を求めるには、いくつかの方法がある。いずれの方法もパッチクランプ回路の入力端の浮遊容量(パッチ電極の容量、オペアンプの入力容量)を補償しなければならない。しかし、EPCー7を含めて市販のパッチクランプ増幅器の補償回路は、ステップ電圧あるいは交流電圧に対する応答から適切な補償が行えないことを見いだした。この原因は補償回路に使用するオペアンプの周波数特性に起因することを明らかにした。 (2)ステップ電圧に対する応答電流緩和曲線解析による膜容量の計測:膜容量22pF、膜コンダクタンス2ns、アクセス抵抗20MΩのモデル回路にステップ電圧を加え、EPCー7の出力電流曲線をコンピュ-タ-処理して各パラメ-タ-を求めた。±10%の誤差で再現性のある価をえた。なお単離膵腺房細胞の非刺激時の膜容量に20pF内外であることを確認した。 (3)位相検出器(ロックイン増幅器)を用いた膜容量の計測:膜コンダクタンスと膜容量を分離して測定するモデル実験を行った。JEETに逆バイアスを加えた場合の微小容量の変化をロックイン増幅器を用いて測定した。その結果ロックイン増幅器(NF社、LIー754型)の分解能は20fFであることを明らかにした。
|