ラットの松果体に存在するGnRH免疫陽性物質の同定を試みた。GnRHの免疫学的検出には、本研究室で作製し、GnRHに特異的な単クローン抗体であるLRH13を用いた。視床下部のGnRH神経細胞の免疫組織染色体と同じ反応条件で松果体に強い免疫陽性反応が認められた。松果体抽出物をSDS-ポリアクリルアミド電気泳動(PAGE)の後、LRH13を用いる免疫ブロットにより検出されたGnRH免疫陽性物質の分子量は約52kDであり、LRH13との免疫反応はGnRHの添加により完全に阻害され、52kD蛋白質にGnRH様ドメインの存在を示唆した。この52kD蛋白質は松果体の非可溶化分画でのみ検出された。即ちこの蛋白質は500mM NaCl・50mM Mgイオンまたは10mMのEDTAを含むトリス緩衝液の処理では膜から遊離せず、2%のTriton-X-100を含む緩衝液の処理により遊離され、膜蛋白質の一種であると考えられる。GnRhの前駆体蛋白の分子量と比較すると、はるかに大きく、またGnRHのcDNAを用いたmRNAのノザンブロットでそのシグナルが得られない等松果体のGnRH様物質は視床下部や他の組織で知られているGnRHとは分子的に異なるものであろうと思われる。52kD蛋白質は蛋白質分解酵素などによりGnRH様ドメインを膜から放出して、低分子性の生理活性ペプチドが放出される可能性がある。2次元電気泳動を用い検討した結果52kD蛋白質は約6.8と7.0の等電点を持つ2種類の蛋白質の混合物であった。これらはV8蛋白質制限分解酵素を用いたペプチドマッピングで全く同じ分解パターンを示し、同一アミノ酸配列を持つ蛋白質であろうと思われる。今後糖鎖の修飾等を調べ、等電点の異なる原因を明らかにするつもりである。またGnRH様アミノ酸配列を持つドメインの検索を行い、その生理的役割も探求する予定である。
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