研究概要 |
レラキシンは卵巣由来のペプチドホルモンである。その効果の一つとして子宮筋の収縮抑制作用が知られている。この点について電気生理学的効果,セカンドメッセンジャ-はcAMPかどうか,カテコラミンβ作用との比較を主眼として研究を行った。その解析手段として外液2価イオン(Mg,Mn)の効果をも併せて観察した。実験材料には妊娠17日のラット,またエストロゲン処理を行った去勢ラット子宮の縦走筋,輪走筋を分離摘出した標本を用いた。レラキシンはNIH供与による。 実験結果:(1)レラキシン(50mU,150mU)はエストロゲン処理3日後の縦走筋,輪走筋,の収縮活動を著しく抑制した。妊娠17日子宮においては,外液にMgが存在する場合,輪走筋においてのみ収縮は抑制された。以下,エストロゲン処理子宮の縦走筋についての実験結果を述べる。(2)50mUレラキシンは,活動電位の持続時間を短縮し,収縮抑制をおこすが,150mUレラキシンにより活動電位はそれ以上の抑制を受けないが,収縮は更に抑制された。膜静止電位,膜抵抗には変化がなかった。(3)イソプレナリンの収縮抑制効果は,Mg,Mnによる前処理によって増強された。レラキシンの収縮抑制効果はMg処理により増強され,Mn処理により減少した。(4)イソプレナリンによるcAMP増大は,Mg,Mn処理により増強された。レラキシンによるcAMP増大はMg処理により増強され,Mn処理によっては増強されなかった。 以上の実験結果より,レラキシンのセカンドメッセンジャ-はおそらくcAMPの可能性が大きい。しかし,β作働薬の膜興奮性,収縮に及ぼす効果とは2価イオンの干渉関係において異なり,両薬物において,細胞内情報発現機序が異なっていることが示唆された。なお,購入したTLー1インタ-フェイス,パッチクランプパ-ジョン55は単離細胞についての電流測定用に用いている。
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