本研究の目的は心筋Ca電流の修飾が、チャンネル開閉様式のいかなる変化によるかを単一チャンネルレベルで、確率的に生起するチャンネル現象を時間をかけて調べることであった。モルモット心室筋でイソプレナリンを還流液に添加した。Ca電流を十分に増大させる濃度の100nMおよび1000nMではノンブランク掃引の割合(利用率)の増大がみられたが、ノンブランク掃引での開確率は僅かに増大したのみであった。開孔時間のヒストグラムは単一指数関数で近似され、時定数と平均開孔時間はアソプレナリンで不変であった。利用率の増大はチャンネルの遅いゲ-ト過程の変化、すなわちノンブランク掃引の連続数の増大と、ブランク掃引の引続数の減少によった。βアゴニストの効果はアデノシンによって抑制された。心房筋でもβアゴニストはCaチャンネルの利用率を増大し、これはアデノシンのアナログであるNECAによって抑制された。Caチャンネルの高度のリン酸化では通常生じないノンブランク掃引での開確率の増大が起こるという。そこで、イソプレナリンの濃度を0.01mM(N=16)、0.1mM(N=13)と極端に上昇して実験を行った。利用率は100nM時と同様に増大したが開確率の増大は依然として小さく、開孔時間も有意の増大を示さなかった。CaアゴニストBAY K8644は長い開孔の割合を増加させ、チャンネルの開確率を増大し、電流を増大する。長い開孔を伴う掃引をモ-ド2掃引という。BAYK8644にイソプレナリンを添加するとモ-ド2掃引の割合が増大した。おそらくチャンネルのリン酸化はBAY K8644のチャンネルへの結合性を増大するのであろう。
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