研究概要 |
血圧の調節に重要な役割をはたしている動脈圧反射系について最近の神経形態学ならびに電気生理学の進展によってその中枢内径路がほぼ明らかになって来た。この動脈圧反射系は中枢内の種々の部位によって,さまざまな反射系の変調を来たすことが知られており,この変調様式に中枢内カテコ-ルアミンが関与していることが推察される。又,高血圧などの病態においても動脈圧反射の中枢内径路の一部に降圧剤が作用し降圧効果に中枢内カテコ-ルアミン細胞群の関与が注目されている。本年度はこの脳内局所カテコ-ルアミンと動脈圧の変動との関連を明らかにした。対象とした部位は延髄背内側(狐束核)を中心とした領域で同領域にマイクロダイアリシス・プロ-ベを押入し,同領域を潅流した液のノルエピネフリン濃度を電気化学検出器ならびに高圧液体クロマトグラムを用いて測定した。さらに低血圧・出血の際の同領域の1ルエピネフリン濃度の変動ならびに頸動脈洞・大動脈神経の除神経前後の変化について検討し,動脈圧の変動と延髄背内側領域の1ルエピネフリン濃度の関係を明らかにした。マイクロダイアリシス法による脳内ド-パミンの測定についてはほぼ確立されているが、1ルエピネフリンに関してはクロマトグラムで1ルエピネフリンのピ-クの周囲に,ゴ-ストピ-クが出現し測定法に問題点があった.そこで心臓ダイアリシス法で用いられた方法と同様な方法でこの問題点をクリアし,良好な測定が可能となった。上記の方法を用いた測定法で延髄背内側領域の1ルエピネフリン濃度の測定が可能となり薬剤による低血圧の際に同部位1ルエピネフリンの増加が認められた。さらに除神経後にも増加が観察され同領域の1ルエピネフリンが動脈圧に相関しカテコ-ルアミンによる中枢内動脈圧変調様式がフィ-ドバック機能を形成していることが推察された.
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