中枢内カテコールアミンの動脈圧調節への関与は各種カテコールアミン受容体阻害剤が中枢を介して高血圧の降圧作用に効果があることから注目されているが、いまだに脳内局所カテコールアミンが個々の局剤部位において動脈圧調節系に対してどの様な機能的役割を果たしているか不明な点が多い。本研究の目的は動脈圧調節に重要な役割を果たしている動脈圧反射と中枢内局所カテコールアミンがいかなる関連を有しているかを明らかにする事である。本年度は視床下部由来の神経ペプチドであるバソプレッシンの中枢内における動脈圧反射の増強機構について、カテコールアミンを介してその増強機構が作用するとの仮説を検定した。麻酔家兎を用いて、開ループで入力-出力の関係を検討するため、大動脈と迷走神経を切断し体循環より遊離した両側頚動脈洞に入力として40-130mmHgまでステップで圧を変化させ、その際の動脈圧を出力として、頚動脈洞圧反射を調べた。バソプレッシンを延髄孤束核領域に注入すると、圧反射のゲインの増強を認めた。あらかじめ同領域にレギチンを注入し前処置すると、バソプレッシンの注入で圧反射のゲインに変化はなかった。以上の結果から神経ペプチドによる中枢内における圧反射増強機構にカテコールアミンの関与が明かとなった。これらの結果から延髄背内側領域においてカテコールアミンは動脈圧反射機構と密接な連関を有し、神経ペプチドの変調機構にも関与していることがあきらかとなった。
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