研究概要 |
本研究は、最近開発された種々の蛍光物質を用い、予め細胞体を逆行性に標識し、そのあと別の蛍光色素により細胞内染色を行い、二重標識することにより、記録細胞の形態のみならず投射様式を併せて分析するものである。このような研究は、運動野・体性感覚野・頭頂連合野では報告がなく、皮質構成細胞のより詳細な機能的分類を可能とし、皮質内情報処理機構解明に寄与すると考える。実験は、ラットおよびネコを用い、数種の蛍光色素(Fast Blue,Nuclear Yellow,Fluoro Goldなど)を視床、線条体、橋核、対側皮質などに注入し大脳皮質の第II〜VI層の錐体細胞を逆行性に標識する。一定の生存期間の後、ウレタン麻酔下で急性実験を行なった。急性実験は、小脳核、延髄錐体を電気刺激し、大脳皮質運動野・体性感覚野・頭頂連合野で細胞内記録を行う。記録には、20%Lucifer yellow、5%HRPまたはbiocytinなどの充填ガラス微小電極を用い電気泳動にて記録細胞に注入して皮質各層の細胞を記録染色を試みた。今年度は、蛍光照明装置付き倒立顕微鏡を購入し、蛍光色素で標識した細胞の形態学的観察が容易になったが、細胞内染色例がまた十分でなく今後例数を増やす必要がある。並行して行った、視床ー大脳皮質投射の解析は、Fluoro GoldやFast Blueなどの蛍光色素と、PHAーLというレクチンの組み合わせで、視床ー大脳皮質投射線維の形態を検討し、運動系と聴覚系での所見を学会誌に報告した(Neuroscience Research,1990;Neuroscience Letters,1990)。同様の実験は、ネコの頭頂連合野でも行い、皮質内終末の電子顕微鏡による形態学的解析を試み学会報告を行い現在論文を準備中である。問題点としては、ネコなどでは、リポフスチンなどの細胞内顆粒が目だち、黄色い蛍光を発する色素の検出が難しく、今後他の蛍光色素の使用を検討しなければならない点が挙げられる。
|