研究概要 |
DーPhenylalanineを含むneuroactive tetrapeptideのアフリカマイマイからの分離はすでになされており,その1次構造(GlyーDーPheーLーAlaーLーAsp)も決定され,この物質は,achatinーIと名付けられていた.平成2年度には,先ずアフリカマイマイ神経節の中で,achatinーIに感受性を有する神経細胞のmappingが行われた.検定された23種の神経細胞のうち,10種が,3x10^<ー4>M achatinーIにより,脱分極性興奮を示した.他の13種は全く応答を示さず,抑制を示す細胞は見られなかった.従ってこの物質は,これら巨大神経細胞のかなり広範なものに対して,興奮性神経伝達物質として働いていると思われる.ついで3種のachatinーI感受性神経細胞を選び,achatinーIとその立体異性体(3x10^<ー4>M)の作用を検定した.合計8種のペプタイドのうち,achatinーIのみが著しい作用を示し,さらにGlyーDーPheーDーAlaーLーAsp([DーAla^3]ーachatinーI)が弱い作用を示した.他のものは全く作用がなく,achatinーIにより活性化されるレセプタ-の立体異性の高さが立証された.次いで膜電位固定法を用いて,有効な2物質の用量作用曲線を測定し,それをprobit法で解析した.巨大神経細胞PON(periodically oscillating neurone)による結果を記せば,achatinーIについては,ED_<50>=0.20x10^<ー5>M(95%confidence limit=0.14ー0.26x10^<ー5>M),Emax=5.46±0.22nA(n=8)[DーAla^3]ーachatinーIについては,ED_<50>=15.46x10^<ー5>M(95%confidence limit=11.09ー21.56x10^<ー5>M),Emax=2.00±0.17nA(n=6)であった.AchatinーIはそのED_<50>値より,神経伝達物質と考えるのに,充分に強い作用持つ.またED_<50>,Emax両方の値より,achatinーIは有意に,[DーAla^3]ーachatinーIよりも作用が強かった.さらにachatinーI作用のイオン機構が検討され,これがNa^+の膜透過性上昇によることが証明された.
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