研究概要 |
アフリカマイマイ神経細胞の興奮性神経伝達物質と考えられるachatinーI(GlyーDーPheーLーAlaーLーAsp)が,検定された神経細胞の約半数に興奮作用を示すこと,そのED_<50>が0.2×10^<-5>M程度であること,その作用には強い立体特異性(stereospecificity)があること,その作用は膜のNa^+に対する透過性の上昇によることなどは,すでに証明されている。平成3年度には,achatinーIとその関連ペプタイドの構造・活性相関を観測した。(1)NーacetylーachatinーIは作用を示さないので,Nー端のamino groupは,作用を示すために必須である。Nー端を延長したり(GlyーGlyーDーPheーAlaーAsp),短くしたり(DーPheーAlaーAsp)すると作用がなくなるので,Nー端のamino groupとCー端の2つのcarboxyl groupとの距離は重要である。(2)DーPhe^2がLー型であるペプタイドは,やはりアフリカマイマイ神経節中に存在し,achatinーIIと名付けられたが,これは作用を示さない,DーPhe^2をaromatic amino acid(DーTyr,DーTrp),aliphatic amino acid(DーLeu),basic amino acid(DーHis)あるいはGlyで置換したペプタイドは,いずれも作用を持たない。(3)LーAla^3をLーVal,LーSer,Glyで置換すると,作用がなくなる。従ってAla^3のmethyl groupの存在は重要である。LーAla^3をDーAlaで置換すると,作用は非常に弱くなる。(4)AchatinーIーamide,[βーAla^4]ーachatinーIには作用がない。従って,αーcarboxylic acidは作用を現すために必須である。[Asn^4]ーachatinーIには作用がないので,βーcarboxylic acidの存在も必須である。[Glu^4]ーachatinーIには作用がないので,4位のアミノ酸のcarbon chainの長さは重要である。このことは,先に述べたNー端のamino groupとC端の2つのcarboxyl groupとの距離が重要である所見と一致する。以上に記したように,achatinーIの作用は,非常に構造特異性(structure specificity)が高い。
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