研究概要 |
先にアフリカマイマイ(Achatina fulica Ferussac)神経節より同定された,tetra-peptideのachatin-I(Gly-D-Phe-L-Ala-L-Asp)は,Achatina巨大神経細胞の興奮性神経伝達物質と考えられる.本年度は,achatin-Iの興奮作用に対する拮抗物質を探し,またこのペプチドが神経伝達物質であると同時に,神経修飾物質でもあることを証明した. 1.Achatina巨大神経細胞PON(periodically oscillating neurone)を用いて,小分子神経伝達物質(acetylcholine,GABA,L-glutamate,serotonin,dopamine,adrenalin,histamineなど)に対する既知の拮抗物質が,achatin-Iの興奮作用に拮抗するかどうか検定した.その結果,検定された20種あまりのhistamine(H_1)blockerのうち,triprolidine,homochlorcyclidine.trimeprazineの3種が,achatin-Iの興奮作用を著しく減弱させることを突き止めた.これらの作用は,作用を検定したhistamine(H_1)blockerの大部分が作用を持たぬことより,histamine blockerとしての作用ではないと考えられる.H_2 blockerならびに他の小分子神経伝達物質の拮抗物質は,achatin-Iによる興奮には,まったく影響を与えなかった. 2.いま1つの巨大神経細胞TAN(tonically autoactive neurone)を用いて,5-hydroxytryptamine(5-HT)による興奮の早い成分が,直接的な興奮作用のED_<50>よりもはるかに薄いachatin-Iの存在により,著しく増強されることが観察された.5-HTによる興奮の遅い成分は,achatin-Iの存在により影響されなかった.また軟体動物から分離されたペプチドのうち,oxytocinとAPGW-amideの作用はachatin-Iの存在により減弱され,一方FMRFamideの作用は増強された.従って,achatin-IはAchatina神経細胞において,興奮性神経伝達物質としてばかりでなく,神経修飾物質としても働いていると考えられる.
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