1.慢性電流密度解析システムの改良: 電極作成法および解析プログラムの改良により、空間分解能100μm、時間分解能16μ秒で安定した電流密度分布が得られ、動物が自由に行動している状態で樹状突起電気活動の詳細を検討することが可能となった。以下に、海馬CA1錐体細胞の電流密度解析結果を示す。 2.刺激誘発電位の電流密度解析: 海馬交連線維を電気刺激すると、刺激部位の違いあるいはシナプス後細胞(海橋CA1錐体細胞)の状態に依存して次の2種類の集合活動電位が発生した。 (1)逆行性樹状突起スパイク: 海馬CA1錐体細胞層または基底樹状突起層で集合活動電位が発生し、尖端樹状突起上をその先端部に向かって0.1m/秒〜1m/秒の速度で逆行的に伝導する。 (2)順行性樹状突起スパイク: 海馬交連刺激により尖端樹状突起の先端部で興奮性シナプス電位が発生すると同時に、その細胞体側100μm以内の範囲で活動電位が発生する。尖端樹状突起先端部で発生した活動電位は細胞体部に向い0.1m/秒〜1m/秒の速度で順行的に伝導するが、樹状突起中央部では0.8m/秒〜1m/秒以上の速い伝導速度を示す。また、樹状突起スパイクの伝導速度は刺激強度が強いほど速い。この結果は、刺激を強くするに従い伝導速度の速い樹状突起が徐々に賦活されてくることを示唆している。 3.発作間欠期スパイクの電流密度解析: CA1野における発作間欠期スパイクの多くは、刺激誘発反応と同じく、樹状突起活動電位の発生を伴うものであった。発作間欠期スパイクにおける樹状突起活動電位は、基本的に、尖端樹状突起の先端部で発生し樹状突起を細胞体に向かった伝導するものと、細胞体層または基底樹状突起層で発生し尖端樹状突起をその先端部に向かって逆行性に伝導するものの2種類が観察された。
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