A.ウシ蛙交感神経節及び脊髄神経節細胞を用いた実験 内向き整流性陽イオン電流(H電流)のcyclic AMP依存性に関する新しい知見は以下の3点にまとめられる。(1)一次求心系内ではA型細胞にのみH電流が観察される。(2)前記A細胞は全身麻酔剤(例、enflurane)の潅流投与に対して過分極応答を示すが、これは麻酔剤による細胞内cyclic AMP濃度の減少に引き続くH電流の抑制により生じる可能性が最も高い。(3)遅延整流性K^+電流のforskolinによる抑制は、forskolinによるアデニレ-トサイクラ-ゼ活性化とは無関係に生じ、その本態は恐らくは所謂『チャネルブロック』である可能性が最も高い。 M型K^+電流に対する細胞内機構に関しては、Cキナ-ゼによる蛋白リン酸化の結果としてM電流が抑制される系と、カルモジュリン依存性プロテインキナ-ゼを介してM電流が増強される系が独立して存在する可能性が示唆された。 B.ラット脳細胞を用いた実験 背側中隔核胞を酵素処理により単離する手技を確立した。単離細胞にwholeーcell modeのpatchーclamp法を応用して静止電位や活動電位を記録した。中隔核を含む通常のスライス標本を用いた実験により、シナプス前終末内のcyclic AMP濃度が上昇すると、少なくとも2種類の伝達物質(グルタミン酸とγーアミノ酪酸)の放出が共に増大する事が判明した。この事は、伝達物質放出にとって必須であるところの内向きカルシウムイオン電流がcyclic AMP依存性である可能性を示唆するものであり、この点に関しては単離細胞を用いて研究継続中である。
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