環境ストレス・生体警告情報の受容とその視床下部統御機構

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02670069
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 清水 宣明 九州大学, 医学部, 講師 (50019634)
• 研究分担者: 片渕 俊彦 九州大学, 医学部, 助手 (80177401) ; 堀 哲郎 九州大学, 医学部, 教授 (00022814)
• キーワード: 拘束ストレス / 視床下部外側野 / 摂食行動 / セロトニン / マイクロダイアリシス / 脾臓ノルアドレナリン / ナチュラルキラ-細胞活性 / 脾臓交感神経

研究概要

本研究は生体システムとしての視床下部警告情報処理機構を解明することを目的とし、神経生理学および神経薬理学的研究から以下の点を明らかにした。
I.ラットの短期拘束ストレスによってその後の摂食量が有意に抑制され、この抑制はセロトニン(5ーHT)受容体阻害剤であるメチセルジドによって有意に拮抗される。カ-ボンファイバ-電極を用いたin vivoボルタメトリ-法とニュ-ロン活動の同時記録から、拘束ストレス時、視床下部外側野の5ーHT代謝物(5ーHIAA)の上昇とニュ-ロン活動の抑制が起こる。
II.脳マイクロダイアリシス法による視床下部外側野の5ーHT測定に関する予備実験を行い、(1)潅流液中のK^+濃度に依存して放出売が増加する、(2)Ca^<2+>ーfree潅流液では放出されない、(3)縫線核の電気刺激により放出量が増大することなどを確認し、無麻酔・無拘束ラットでの視床下部外側野5ーHT測定技術を確立した。さらにこの方法を用いて拘束ストレス時の視床下部外側野の5ーHT動態を検討した結果、視床下部5ーHT放出の促進が観察され、これがdiazcopamの前投与(1mg/kg,i.p.)で有意に抑制されることを明らかにした。
III.ストレスによる細胞性免疫の抑制機構を解析するため、脾臓ノルアドレナリン(NA)の放出をマイクロダイアリシス法を用いて測定した。その結果、拘束ストレスによってNAの放出が平常値の約7倍に増大し、この増大はあらかじめ脾臓への交感神経を切除しておくる消失することが明らかになった。また拘束ストレス負荷により、脾臓のナチュラルキラ-細胞活性が抑制され、この活性抑制も除神経によって減少することから、ストレスによるナチュラルキラ-細胞活性抑制は、脾臓交感神経からのNA放出の促進による可能性を示唆した。

研究成果

• [文献書誌] Ono,K.: "Fetal hypothalamic brain grafts to the ventromedial hypothalamic obese rats: an immunohistochemical,electrophysiological and behavioral study." Brain Research Bulletin. 24. 89-96 (1990)
• [文献書誌] Minami,T.: "Hypothalamic nueronal activity changes to 3ーhydroxhbutyric acid,an endogenous organic acid." Brain Research. 509. 351-354 (1990)
• [文献書誌] Shimizu,N.: "Gulutamate modulates dopamine release in the striatum as measured by brain microdialysis." Brain Research Bulletin. 25. 99-102 (1990)
• [文献書誌] Duan,S.: "Hyperpolarizing action of enkephalin on neurons in the dorsal motor nucleus of the vagus in vitro." Brain Research Bulletin. 25. 551-559 (1990)
• [文献書誌] Shimizu,N.: "Hypothalamic microdialysis of mazindol causes anorexia with increase in synaptic serotonin in rats." Physiology and Behavior. 49. 131-134 (1991)
• [文献書誌] Aoyagi,K.: "Serotoninergic modulation of feeding behavior: Analysis with in vivo voltammetry and simultaneous recording of single neuron activity in the lateral hypothalamus." Behavioural Brain Research.