研究概要 |
亜硝酸化合物やEDRFのような細胞内cGMP濃度の上昇を起こす血管拡張物質の作用機序の一つとして重要視されている、cGMP依存性蛋白質リン酸化酵素(Gーkinase)による血管平滑筋細胞膜Ca^<2+>ーpump ATPaseの活性化に、同酵素の強力な活性化物質であるphosphatidylinositolー4ーmonophosphate(PIP)の合成酵素であるPIーkinaseの活性化が関与するか否かを検討した。 細胞膜Ca^<2+>ーpump ATPase活性の特異的測定が可能であり、Gーkinaseによる活性化がみられる、ブタ大動脈の細胞膜分画に、adenosineによる抑制に高感受性(IC_<50>=106μM)のtype2PIーkinase活性が見出された。cGMPと精製Gーkinaseは同酵素を活性化したが、adenosineはGーkinaseによる細胞膜Ca^<2+>ーpump ATPaseの活性化を抑制しなかった。一方、通常の方法とは異なりphospholipid非存在下にcalmodulin affinity chromatographyでブタ大動脈から部分精製した細胞膜Ca^<2+>ーpumpATPaseが、Gーkinaseにより濃度依存的に強い活性化を受けることが見出されたが、この活性化はadenosineで抑制されず、またphosphatidylinositol phospholipids(PI、PIP、PIP_2)の存在を必要としなかった。さらに、用いた細胞膜Ca^<2+>ーpump ATPaseの標品にはPIーkinase活性を検出できなかった。また、精製Ca^<2+>ーpump ATPase標本に、Gーkinaseにより用量依存的にリン酸化される、PIーkinaseの分子量とは異なる、分子量215,000の蛋白質が見出され、活性化に関与している事が示唆された。以上の結果からGーkinaseによる血管平滑筋細胞膜Ca^<2+>ーpump ATPaseの活性化にはPIーkinaseの活性化は関与していないものと考えられた。
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