研究概要 |
1.KoskーKosickaらの方法(J.Biol.Chem.,261,3333ー3338,1986)に基づき、ブタ大動脈よりcalmodulin affinity chromatographyで部分精製した細胞膜Ca^<2+>ーpumping ATPaseが、Gーkinaseにより濃度依存的な強い活性化を受けることが見出された。この活性化に伴い、同酵素標品に存在し、還元条件下のSDSーPAGE上で分子量240kと138kを示す2つの蛋白質がリン酸化されることが見出された。 2.細胞膜Ca^<2+>ーpumping ATPaseがGーkinaseにより濃度依存的な活性化を受ける条件下で、この二つの蛋白質のリン酸化量を測定したところ、240k蛋白質のリン酸化のみがGーkinaseの濃度に依存して増加し、一方138k蛋白質のリン酸化量は変化していなかった。 3.通常のcalmodulin affinity chromatographyで高度に精製した細胞膜Ca^<2+>ーpumping ATPase標品では、240kおよび138kのリン酸化基質蛋白質は存在せず、またGーkinaseの活性化作用もみられなかった。 4.Gーkinaseによる活性化作用のみられる細胞膜Ca^<2+>ーpumping ATPase部分精製標本をGーkinaseでリン酸化後、新たに開発したcalmodulim affinity chromatographyで分画したところ、240kと138kのGーkinaseリン酸化基質は1M NaClで溶出される画分に回収され、EGTAで溶出される,分子量135kと145kを示す2つの細胞膜Ca^<2+>ーpumping ATPaseのisoformとは完全に分離した。 5.以上の結果より、Gーkinaseは分子量240kの蛋白質をリン酸化することにより血管平滑筋細胞膜Ca^<2+>ーpumping ATPaseを活性化すると考えられること、また、この活性化にはCa^<2+>ーpumping ATPase自身の直接のリン酸化は関与していないことが示された。 6.現在、240kリン酸化基質蛋白質の同定のための実験が進行中であり、既に、同程度の分子量を示すいくつかの細胞骨格系蛋白質(talin、spectrin、ankyrin,filamin)とは免疫学的に異なる性質を示すことがわかっており、さらに、精製240k蛋白質を用いて、蛋白化学的並びに組替えDNA技術を用いた方法で同定を試みているところである。
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