研究概要 |
ラット脳より部分精製した阻害性GTP結合(Gi)蛋白の質的変動を観るための基礎的デ-タを蓄積した。そのα,β,αサブユニット三量体の解離は,Birnbaumerらの方法に従い,精製Gi蛋白をショ糖勾配上に静置後、超遠沈により得られた各分画を百日咳毒素にてADPーribosylationを行ない,オ-トラジオグラフ上にて解析した。無処置Gi蛋白三量体は4Sの沈降定数を示し,50mMMg^<2+>,100μMGTPrSによる前処置により,2Sの沈降定数を示し,後者の条件下にて,三量体は,αサブユニットとβαサブユニットに解離したと考えられた。リチウムイオン(Li)のG蛋白に対する作用点を探るために,以下の研究を行なった。Li2mMをNG108ー15細胞に加えて数日間培養したが,Gi蛋白に対する抗体を用いたimmnnoblot上、変化はなく,LiはGi蛋白に量的な変動を生じさせなかった。次に,Liにて生じるGi蛋白の質的変動を知るため以下の研究を行なった。(1)前述のGi蛋白三量体の解離に対し,Liは,その三量体形成,解離共に影響しなかった。(2)ラット心筋細胞,脳,大動脈,ヒト血小板において,百日咳毒素によるG蛋白のADPR反応量を,Liは濃度依存的に抑制して(IG_<50>=約1mM)。(3)ヒト血小板におけるα_2受容体刺激GTPase活性をLiは増加させた。(4)同細胞におけるα_2受容体アンタゴニストを用いた結合実験にて,GTPシフトを減弱させた。(5)同細胞におけるフォルスコリン刺激アデニレ-ト活性に対するα_2受容体刺激による同活性抑制をLiは減弱せしめた。この様に,G蛋白の質的変動を,in vitroの実験系にて観察できることが示され,今后,リン酸化蛋白との関連を研究する。
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