研究概要 |
神経刺激伝達物質としての脳内ヒスタミンの生理的な役割を検索し,その神経化学機構を解明する目的で,マイクロダイアリシス法を応用し,脳内における内因性ヒスタミンの動態とその変動を検討し,初年度には以下のような成績を得た. (1)麻酔下のラットを用い,マイクロダイアリシスで視床下部から回収されるヒスタミンは神経由来であり,肥満細胞由来ではないことを以下の事実から確認した.1)細胞体の電気刺激または神経終末部位の高カリウム刺激によりヒスタミンが遊離し,この遊離はカルシウム依存性であった.2)ヒスタミンの基礎遊離はテトロドトキシンの局所投与で速やかに検出感度以下に減少し,また,αーフルオロメチルヒスチジンによるヒスタミン生合成阻害によっても約1時間後には投与前の20%以下に低下した.3)チオペラミド投与によるシナプス前膜H3ー受容体の選択的な遮断により,基礎遊離が約3倍に増加した. (2)無麻酔・非拘束条件下で視床下部からのヒスタミン遊離の日内変動を観察したところ,夜間活動期に増加し昼間に減少する明瞭な日内変動が存在することを認めた. (3)視床下部からのヒスタミン遊離はGABAによりGABA_AーおよびGABA_Bー受容体を介して低下し,グルタミン酸によりNMDA受容体を介して増強し,これらのアミノ酸伝達物質によりヒスタミン神経系の活動性が制御されている可能性が示された. (4)海馬からのアセチルコリンの遊離が結節乳頭核の電気刺激により増強し,この増強はαーフルオロメチルヒスチジンの前投与により減弱した.従って,脳内ヒスタミン神経系は,中隔野周辺において,ここに存在するのアセチルコリン含有ニュ-ロンの活動性を制御している可能性があり,アルツハイマ-病の病態との関連から興味がもたれる.
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