研究概要 |
ラットの中大脳動脈(MCA)閉塞の脳虚血モデルを用いて、脳虚血時の大脳皮質および線条体のヒスタミン(HA)の動態変化を調べ、モノアミン類の動態変化と比較した。HAおよびteleーメチルヒスタミン(tーMH)は高速液体クロマトグラフィ-(HPLC)・蛍光検出法で、モノアミン類とその代謝産物はHPLC・電気化学検出法で定量した。脳の水分含量は組織を110℃で24時間乾燥することにより測定した。MCA閉塞後虚血側脳領域の水分含量は徐々に増加した。閉塞1時間後、虚血側では大脳皮質のノルエピネフリンと線条体の5ーヒドロキシトリプタミンのレベルが有意に減少し、線条体の3,4ージヒドロキシフェニル酢酸とホモバニリン酸のレベルが著明に増加した。一方、虚血側の大脳皮質および線条体のHAとtーMHのレベルは虚血誘発後徐々に増加し、6ー12時間後には変化は著明で対照側と比較して有意差が認められた。虚血側の線条体のHAとtーMHは反対側の値のそれぞれ2および3倍のレベルに達した。ヒスチジンデカルボキシラ-ゼ抑制薬αーフルオロメチルヒスチジンで虚血誘発1時間前に処置したラットでは、HAとtーMHのレベルの増加は観察されなかった。MCA閉塞9時間後にHAーNーメチルトランスフェラ-ゼ抑制薬メトプリンを投与すると、虚血側線条体の既に上昇していたHAレベルはさらに有意に増加した。このような結果は、脳虚血誘発後モノアミン代謝の変化は急速に起こるが、HA動態の変化は徐々に起こることを示している。また、このHA動態の変化は、脳のヒスタミン作動性ニュ-ロンの活動が、モノアミン作動性ニュ-ロンの活動と異なって、脳虚血誘発後徐々に亢進することを反映するものと考えられる。
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