「薬物活性の日周リズムと加齢による変容」に関する実験的検討を、「用量ー濃度関係」と「濃度ー反応関係」の2つの側面から実施計画し、以下の結果を得ている。 実験動物(マウスとラット)を対象にした研究により、腎排泄型薬物(ゲンタマイシン)の薬物動態(クリアランス)には日周リズムが認められ、暗期の活動期にクリアランスは高値を、明期の休息期には低値を示すことが明らかになった。この日周リズムは若年ラットにおいては明確に認められるが、加齢に伴い不明確となり、リズムの振幅が減少することが示された。特に3年以上の老齢ラットにおいてこの所見は著明に認められた。また、この薬物クリアランスに認められる日周リズムに及ぼす加齢の影響は、行動量と摂食・摂水量の日周リズムと密接に関連しており、これらは運動した現象であることが判明した。 同様のゲンタマイシンの薬物クリアランスの日周リズムは、若年健常者においても認められることをすでに明らかにしている。ただし人間は昼行性であるので、夜行性のラット等実験動物と異なって、昼間の活動期に薬物クリアランスが高まる。人間の場合にも、ラットと同様に、加齢に伴い腎排泄型薬物のクリアランスの日周リズムが不明確になるかどうかを、老年者について検討しつつある。
|