本研究では、体内で代謝されることなく、主として腎臓から尿中に排泄される薬物に焦点を紋り、臨床でもよく使用されるアミノグリコシド系抗菌薬(gentamicinとamikacin)とlithiumの薬物動態・薬効・毒性に及ぼす影響を、マウスとラットを対象にして、生体リズム学的視点から明らかにすることを目的にした。さらに、生体の老化に伴って、これらの薬物のリズム学的特性がどのように変容するかを、ラットを対象にして検討した。 その結果、これら3つの薬物はいづれも同様に、薬物動態に明らかな日周リズムを認め、クリアランスが活動期(暗期)に高まり、休息期(明期)に低下すること、このクリアランスの日周リズムは、毒性のみならず薬効(amikacinの緑膿菌感染症マウスにおける抗菌効果)にも反映し、生体リズムの中でどの時点で投与するかによって著明な差異を生ずることが明かとなった。また、生体の老齢化は、このような腎排泄型薬物のクリアランスを低下させるだけでなく、その日周リズムの振幅を小さく変え、リズムの特性を不明確にすることが判明した。 これらの実験動物における結果が、臨床の場における患者の薬物治療に際してどのような関連性を有するかは今後の検討が必要であるが、これらの薬物の合理的な(より有効でかつ安全な)使用に際して、さらには老年者における薬物治療の効率を高めるために、さらにはその領域における研究を進めていく際の参考になる有益な資料になるものと思われる。
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