研究概要 |
βーアドレナリン受容体(AR)を介した動脈条片標本の弛緩反応を、高血圧の発症との関連性から検討した。また,βーARを介する弛緩反応を評価するために,プリン受容体(PーAR)とムスカリン受容体(MーAR)を介する動脈の弛緩反応も検討した。動脈標本の収縮・弛緩は、等尺性張力変位ピックアップ(日本光電TBー612T)を介して測定した。イソプロテレノ-ル,ノルエピネフリンとフェノテロ-ルによる動脈の弛緩反応及びこれら薬物に対する弛緩反応のアテノロ-ルとブトキサミンによる競合拮抗から,ラットの大腿動脈のβーARは主としてβ_1サブタイプに属し,腸間膜動脈と大動脈ではβ_2サブタイプであることが明らかとなった。動脈の薄切片(厚さ1ミクロン)にオ-トラジオグラフィ-を応用して,^<125>Iシアノピンドロ-ルでβーAR分子の分布を検討したところ,大腿動脈と大動脈で,それぞれβ_1とβ_2の分布が確かめられた。高血圧自然発症ラット(SHR)の動脈では,β_1ーARを介した弛緩反応が減弱していた。この減弱は,まだ高血圧を発症していない幼若SHRでも認められた。デオキシコルチコステロン1%食塩水による高血圧発症ラットの動脈において,高血圧の発症とほぼ同時にβ_1ーARを介した弛緩反応が減弱した。 ラットの大腿動脈や大動脈にはM_3ームスカリン受容体やP_<2y>ープリン受容体の存在を認めた。これらの受容体を介する内皮細胞依存性の弛緩反応は、SHRの動脈で損われていなかった。 以上の結果から,β_1ーARを介した動脈の弛緩反応の特異的減弱が,高血圧を発症すること,またβーARは他の受容体と異なった機構で調節されていることが示された。
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