研究概要 |
本研究は、前年度より引き続き、ATPの非神経性遊離の特性およびその生理的意義を明らかにする目的で行われた。実験はモルモット精管および回腸縦走筋を用い、遊離したATPはluciferinーluciferase法により、またAChはHPLCーECD法により、それぞれ測定された。1.ATP誘発ATP遊離機構の存在 安定なP_2ーagonistであるα,βーmethyleneATP(α,βーmATP)およびβ,γーmethyleneATPは、回腸および精管標本から、いずれも収縮に伴う著しいATP遊離を引き起こす。これはP_2ーantagonistのsuramineで完全に拮抗された。しかしながらadenoーsineなどにはこの様な作用は認められなかった。従って、平滑筋にはATP誘発ATP遊離機構の存在が示唆された。2.心房筋からの非神経性ATP遊離 電気刺激による心房筋の収縮およびATP遊離はisoproterenol(Iso)、forskolinおよびouabain投与によっていずれも増強された。IsoによるATP遊離はβ_2ーantagonistのbutoxamineによってほとんど影響されず、propranololによってほぼ完全に拮抗されたので、これが主に非神経性の遊離であることが示唆される。3.非神経性遊離ATPによる神経伝達調節 回腸の電気刺激によるACh遊離はα,βーmATPにより濃度依存性に抑制され、これはP_1およびP_2ーantagonistのtheophyllineおよびsuramineによって、また、ecto5'ーnucleotidase阻害剤のα,βーmethyleneADPによってそれぞれ拮抗された。前述のようにα,βーmATPはATPを非神経性に遊離させるので、これらのことより、この遊離したATPが、transsynapticなnenromodulaterとして作用する可能性が考えられる。その結果、このような心房筋からのATP遊離が非神経性であることが強く示唆された。本研究の結果、非神経ATP遊離は平滑筋の他に心房筋においても発現すること、この遊離ATPの生理的役割としてシナプス遡行性の神経伝達調節への関与が示唆された。
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