本研究の目標は、動物細胞膜に存在するアミノ酸輸送系の一つでありシスチンとグルタミン酸に特異的でXc^ー系と呼ばれている輸送系を構成するタンパク質のcDNAクロ-ニングを行うことであった。このシスチン輸送活性は、高酸素分圧、過酸化水素、親電子試薬、カドミウム、亜ヒ酸等によって接着性細胞に誘導される性質を持っており、熱ショックタンパク質とは異なったストレス誘導タンパク質と考えられている。本輸送系は、主要な生体抗酸化物質であるグルタチオンの前駆体アミノ酸であるシスチンを細胞内に取り込む主要な輸送系であり、輸送活性の誘導は、グルタチオンの合成促進をもたらす。本タンパク質の実体は不明であり、膜からのタンパク質の分離精製が技術的に困難であるため、私どもはアフリカツメガエル卵母細胞を機能アッセイ系としてcDNAのスクリ-ニングを試みて以下のような成果を得た。 1.マウス腹腔由来マクロファ-ジをin vitroでジエチルマレイン酸で刺激しシスチン輸送活性を誘導させて、mRNAを調整した。このmRNAをカエル卵母細胞へ注入し、シスチン輸送活性の発現に成功した。 2.目的の担体タンパク質をコ-ドしているmRNAのサイズを検討するため、mRNAを庶糖密度勾配遠心により分画した。高い活性を発現したのは1.5〜2.9kbの間にある画分であった。この画分と未分画のmRNA双方を材料としてλZAPIIcDNAライブラリ-を作製した。 3.cDNAライブラリ-より、ジエチルマレイン酸で誘導されるcDNAを含むクロ-ンを+/ープラ-クハイブリ法を用いて多数選別した。それらのなかから、私どもの研究室で見いだした23kDaストレスタンパク質をコ-ドしているcDNAクロ-ンを見いだした。そして、その他の複数種のクロ-ンのなかにシスチン輸送担体タンパク質をコ-ドしているものが存在している可能性があるため、現在引き続き調べている。
|