研究概要 |
1.IP_3受容体のチャネル機能の解析 精製したIP_3受容体あるいはネイティブな受容体とも架橋実験の結果,4量体を形成していることを明らかにしたが、精製したものについて脂質平面膜に組み込みCa電流が生ずるか否か調べたところ,IP_3及びCaの存在下,明らかな電流の発生が認められた。この結果は4量体構造を持つIP_3受容体そのものがIP_3存在下,アロステリックな構造変化を引き起こし,チャネル活性を示すようになると結論した。同様に精製したIP_3受容体をリポソームに再構成した場合もIP_3依存的な ^<45>Caの取り込みが認められた。さらに,この取り込みはIP_3受容体のC末端配列を認識するモノクローナル抗体によって強く阻害された。この結果はC末端構造がチャネル活性に重要な役割を果たしていることを示唆するものである。 2.IP_4結合蛋白質の生化学的及び免疫組織化学的解析 マウス小脳には少くとも3種類のIP_4結合蛋白質が存在することを明らかにしたが,その中の一種(IP_4BPI)について高純度に精製し生化学的諸性質並びにマウス脳における局在性の詳細について検討を行なった。IP_4BPIは140Kと65Kの一次構造上極めて類似した2種の蛋白質の複合体として存在していることを明らかにした。IP_4BPIのIP_4結合活性に対するKα値は12nMであり,結合の至適pHは8〜9であった。次にIP_4BPIの140K分子種に対するポリクローナル拡体を用いてマウス脳における本蛋白質の局在性について免疫組織化学的に解析した。その結果,IP_4BPIは中枢神経系全体に存在することが認められ,とくに,嗅球の外網状層,僧帽細胞層,大脳皮質錐体細胞の細胞体と樹状突起,海馬の放射線維層,小脳プルキンエ細胞の細胞体と樹状突起及び糸球体(顆粒細胞と苔状線維のシナプス部位)に高い局在性を示した。
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