研究概要 |
1.マウスの前脂肪細胞株3T3ーL1の分化系を用いて、細胞質とミトコンドリアの機能をカップルさせる重要な代謝系で、生体エネルギ-獲得に必須なアスパラギン酸・リンゴ酸シャトルを構成する細胞質型及びミトコンドリア型リンゴ酸脱水素酵素(cMDH,mMDH)と同じく細胞質型及びミトコンドリア型アスパラギン酸アミノ基転移酵素(caspAT,mAspAT)遺伝子の発現調節機構の解析を行った。 1)3T3ーL1はmethylisobutylxanthine,dexamethason及びinsulin処理により脂肪細胞へと分化するが、分化誘導後3日目の細胞において、cMDH、mMDH、mAspATのmRNAレベル及び酵素活性の著明な増大が認められた。しかし、cAspAT遺伝子については発現の変化は観察されなかった。また、分化に伴うmMDH遺伝子の経時的発現変化を検討した所、分化誘導後2日目に約2.5倍、5日目には約5倍の上昇が認められた。 2)先に我々は、マウス由来のNIH3T3細胞を用いてmMDH遺伝子の5'上流域には独立に機能し得る2つのプロモ-タ-(P_1,P_2)が存在することを明らかにした。そこで、これらの領域とCAT遺伝子とを融合させた組換え体P_<(1+2)>ーCAT,P_1ーCAT,P_2ーCATを作製して3T3ーL1細胞に導入し、分化誘導に伴うプロモ-タ-活性の変化を検討した。その結果、P_<(1+2)>及びP_2については内在性のものと同じ挙動を示したが、P_1単独での発現の誘導は認めなかった。 2.ヒトcAspAT遺伝子を単離し、その構造を決定した。ヒトcAspAT遺伝子は30kb以上の大きさで、9個のエクソンより構成されていた。5'上流域には典型的なTATA boxやCAAT boxは存在せず、housekeeping遺伝子に特徴的な構造をしていた。ヒトcAspATは413個のアミノ酸からなるが、マウス、ブタ、ニワトリの配列と比較した結果、80%〜92%の範囲で相同性を有し、酵素の機能発現に必須な配列は全て保存されていた。
|