研究概要 |
アスパラギン酸アミノ基転移酵素には細胞質型(cAspAT)とミトコンドリア型(mAspAT)の2つのアイソザイムが存在するが、個々のアイソザイムの機能分担を解析する目的で、遺伝子標的組み込み法により、マウス細胞質型遺伝子の挿入変異導入による破壊を試みた。また、cAspATは生体エネルギ-獲得に必須な酵素であり、遺伝子の完全な破壊は細胞死に至る可能性も考えられたので、挿入変異導入用ベクタ-と同時に、酵素機能の部分的な破壊を目的とした点変異導入用ベクタ-の作製を行った。(1)挿入変異導入用ベクタ-:マウスcAspAT遺伝子の第2イントロンから第6エクソンにわたる約5kbのDNA断片を用い、第3エクソンにわたる約5kbのDNA断片を用い、第3エクソン内に、MCーneo遺伝子を挿入した。3'末端には、非相同組換えによる組み込みを排除する為に、MCーtk遺伝子を連結させた。我々は、これと同じ選別マ-カ-を持つ置換ベクタ-とマウスES細胞を用いてトランスサイレチン遺伝子の標的破壊を行い、標的組み込み株の選別法の有効性を確認し、単離した変異ES株を用いてのキメラマウス作製及び子孫への変異伝達に成功した。(2)点変異導入用ベクタ-:標的組み込みと同一分子内での相同組換えを利用したHastyらの方法(Nature,350,243ー246,1991)に基づいて作製した。cAspATのTyr70をPheに変えた変異酵素では酵素活性が約15%に減少することを見出しているので、まずマウスcAspAT遺伝子の第1イントロンの一部、目的のTyr70をコ-ドする第2エクソン、第2イントロンの一部を含むDNA断片を調製し、部位特異的変異導入法によりTyr70→Phe変異を作製した。このDNA断片をプラスミドpGEM1に結合させ、次いで選別マ-カ-として、MCーneo遺伝子とその下流にMCーtk遺伝子を導入したものを置換ベクタ-とした。
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