研究概要 |
1.ヒトcAspAT遺伝子の単離と構造解析:ヒトcAspAT遺伝子は30kb以上の大きさで、9個のエクソンより構成されていた。5'上流域の配列はヒトとマウスで高い相同性が認められ、先にマウス遺伝子で同定した転写調節因子CTF/NFIの結合配列はヒトにおいても完全に保存されていた。ヒトcAspATは413個のアミノ酸からなるが、マウス、ブタ、ニワトリのものと80%〜92%の範囲で相同性を示し、酵素の機能発現に必須なアミノ酸配列は完全に保存されていた。 2.マウス前脂肪細胞株3T3ーL1の分化系を用いたアイソザイム遺伝子の発現調節機構の解析:3T3ーL1細胞は薬剤処理により脂肪細胞へと分化するが、この分化誘導に伴ってcMDH、mMDH、mAspATのmRNAレベル及び酵素活性が著明に増大した。一方、cAspATについては変化を認めなかった。 3.ホルモンによるアイソザイム遺伝子の発現調節機構の解析:ラット肝細胞株H4IIEを用い、デキサメサゾン(Dex)及びサイクリックAMP処理後のアイソザイム遺伝子の発現変化を検討した結果、cAspATについて、酵素活性とmRNAレベルの著明な増大を認めたが、他のアイソザイム(mAspAT,cMDH,mMDH)においては変化を認めなかった。マウスcAspAT遺伝子の5'上流域には2個のGRE(Glucocorticoidーresponsive element)様配列(GREー1;ー581/ー567bp,GREー2;ー459/ー441bp)が存在しているが、欠失変異体を用いて解析により、Dexによる発現誘導にはGREー2が重要であることを明らかにした。 4.遺伝子標的組み込み法によるcAspAT遺伝子の破壊:マウスcAspAT遺伝子の完全な破壊を目的とした挿入変異導入用ベクタ-と、酵素機能の部分的な破壊を目的とした点変異導入用ベクタ-の作製を行った。
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