研究概要 |
平成2年度に於て、低分子キニノ-ゲン重鎖上のドメイン2と3領域の欠損蛋白質の作製が終了し、ワィルドタイプの低分子キニノ-ゲンともどもBHK細胞での発現を試みた。確かに、これらの蛋白質が発現されていることを確認した。平成3年度には、これらの発現蛋白質の培養メディウムからの精製とそれらの蛋白質の生化学的特性とキネティクパラメ-タ-の解析を試み、以下の結果を得た。 【1】Wild typeおよび変異低分子キニノ-ゲンの発現:低分子キニノ-ゲンに対するポリクロ-ナルとモノクロ-ナル抗体を用いるELISA法で、これらの低分子キニノ-ゲンの単位メディウム当たりの発現量を測定すると、それらの発現量は非常に少なく、約50ng/mlであった。 【2】Wild typeおよび変異低分子キニノ-ゲンの精製:発現ベクタ-を移入したBHK細胞の培養にはFCSの含有されていないバイオリッチ1を用いた。発現蛋白質の誘導にはデキサメサゾンを使用した。それぞれ、合計約5Lの培養メディウムを集めた。次いで、これらの蛋白質を、硫安分画(70%飽和)、RedーSepharose、Mono Q等のカラムクロマトグラフィ-を用いて精製した。部分精製ではあるが、Wild typeおよびドメイン2と3の欠損した変異低分子キニノ-ゲンは、最終的にそれぞれ約3μg精製された。精製されたこれらの蛋白質のシステインプロテア-ゼインヒビタ-としての活性は、ヒトの血漿から精製された低分子キニノ-ゲンの活性と比較すると、ほぼ理論的値であった。また、これらの発現蛋白質の分子量等も予測された値に,ほぼ一致していた。現在、培養メディウムを大量に集めると共に、より効果的な精製法の工夫を行なっているところであり、更に、キネテックパラメ-タ-を含む生化学的な特性の解析を行なう予定である。
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