研究概要 |
I.GPIアンカ-型膜蛋白質のプロセシングに関する研究。 ヒト悪性絨毛上皮腫細胞を用いて,Glycosylーphosphatidylinositol(GPI)アンカ-型蛋白質であるアルカリホスファタ-ゼ(ALP)のプロセシングについて検討した。プロ型前駆体を同定するために,C末端疎水性ペプチドと特異的に反応する抗Cペプチド抗体を調製した。 1)ALPは,まずC末端に疎水性ペプチドをもつプロ型前駆体として合成されるが,合成後速やかに(5分以内)この領域が切断されGPIアンカ-型になり,30分後には細胞表面に発現されるようになる。 2)2ーFluoroー2ーdeoxyglucoseでGPIの生合成を完全にブロックすると,ALPはプロ型前駆体のまま小胞体に蓄積され,やがて徐々にC末端領域の切断が起り,ALPは細胞外へ分泌されるようになる。 3)以上の結果は,ALPが膜結合酵素として細胞表面に発現されるためには,小胞体におけるC末端の切断とGPIによる置換が必須であることを示唆する。 II.ジペプチダ-ゼIV(DPP IV)の活性中心の同定とその欠損をもたらす変異体の解析。DPP IVは細胞表面に局在する膜結合酵素である。 1)DPP IVは活性部位にGlyーTrpーSerーTyrーGly(N末端から629ー633番目)の配列をもつセリンプロテア-ゼであり,Trp^<630>以外のアミノ酸はいずれのアミノ酸を置換しても酵素活性を失なうことを明らかにした。 2)DPP IV欠損ラットでは,cDNAの分離・塩基配列の決定により,本酵素のGly^<633>がArgに置換されていることがわかった。 3)さらに,肝細胞における生合成の実験から,この変異酵素は生合成後極めて速やかに小胞体で完全に分解されることが判明した。 4)従って,Gly^<633>→Argの置換は,単に本酵素を非活性型にするだけでなく,蛋白質としても欠損状態をもたらすものと結論される。
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