研究概要 |
前年度、非クロマフィン(NC)細胞のmRNAより作製したcDNAライブラリ-をラット甲状腺由来のFRTL5細胞に遺伝子導入を行い、約1,500個の安定したトランスフォ-マットを得たことを報告した。今年度、これらの細胞についてPGD_2による細胞内cAMP濃度の変化について検討した結果、一次スクリ-ニングでは1168細胞株のうち155個の細胞がPGD_2により1.5倍以上のcAMPの上昇が認められた。さらに、二次、三次とスクリ-ニング行った結果、7種類の細胞がPGD_2と反応してcAMPを上昇させたが、中でもA4ー7は再現よくPGD_2と反応し、1.4ー1.8倍程度のcAMPを上昇させた。また、PGD_2受容体のアンタゴニストであるBWA868CやAH6809でPGD_2によるcAMPの抑制が見られたことから、PGD_2受容体遺伝子がこの細胞内で発現していることが示唆された。そこでCOS7細胞とA4ー7細胞を融合させ、クロモゾ-ム外にでたpcD2プラスミドをHirt法で回収し、コンピテント細胞に遺伝子導入し、200コロニ-からプラスミドを抽出した。BamH1とXhoIで切断してインサ-トcDNAのサイズを調べた結果、15種類の異なるcDNAサイズを含むクロ-ンが得られた。これらを再度FRTL5細胞に遺伝子導入し、60時間後にcAMPアッセイを行った結果、PGD_2に反応してcAMPを1.2ー2倍上昇させるクロ-ンが一つ得られ、現在このクロ-ンの塩基配列を解析中である。一方、前年度、PGD_2はcAMPを介して牛胎児気管由来のEBTr細胞のDNA合成、cーmyc遺伝子の発現を抑制することを明らかにしたが、PGD_2がcAMPを介して細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]i)の上昇を引き起こすこと、逆に他のホルモンの[Ca^<2+>]iの上昇を抑制することを見いだした。また、ラット脳星状細胞ではPGD_2はPGF_<2α>受容体を介して[Ca^<2+>]iを上昇させることを明らかにした。このようにPGD_2の情報伝達機構は多様であり、一日も早くPGD_2受容体遺伝子のクロ-ニングを行い、解明したいと考えている。
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