研究概要 |
肝類洞にγδーTリンパ球が散在性に認められ,その役割が注目されている。この細胞が肝炎でどの様に関与しているかを肝生検材料を用いて免疫組織化学的に調べた。B型肝炎の肝細胞障害部,特にspotty necrosis部にリンパ球の集簇が見られ,それらの多くはCD8陽性リンパ球やγδーリンパ球であることを確認した。更にplecemeal necrosis部についても引きつづき検討した。炎症反応のないグリリン鞘には通常γδリンパ球は存在しないが,慢性肝炎になると多数のリンパ球が浸潤し,リンパ濾胞を形成することもあることは周知のことで,特にC型肝炎で目立っていた。このリンパ球はCD8陽性リンパ球の他にも各種のリンパ球が認められた。γδリンパ球も症例間に数の差は見られるが,常に認められた。このリンパ球は同一患者の経過を追った肝生検材料の検索ではインタ-フェロン投与により著明に増加し,中止するとほぼ元の数に減少した。ウィルスに感染した肝細胞がいかなる機序でリンパ球に攻撃されるかについて糖鎖の発現を中心に検討してきた。ELAMのリガンドであるsLe^xで代表される様にリンパ球接着因子が糖鎖構造を有することが知られ,肝臓におけるICAM,ELAMを検索してきたが,肝類洞壁には常時ICAMを発現し,ELAMはグリリン鞘以外には認められず,これらからの細胞障害機序の説明は困難と考えられた。γδーリンパ球は,通常細胞質内に顆粒をもたず,いわゆるLGLとは形態学的に異っていた。しかし,ヒト肝臓から分離採取したリンパ球をILー2を添加し短期培養すると細胞質内に多数のdense granuleが出現した。すなわち,γδーリンパ球は状況によりLGL型ISK細胞に変換しうることを証明した。
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